リンダはチキンをたべたい!

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INTRODUCTION
舞台はフランスのとある郊外。主人公リンダと母ポレットのチキンをめぐる大騒動と亡き父の記憶を描く物語。
本作の監督・脚本は気鋭の映画作家キアラ・マルタ(『Simple Women』)とアニメーション作家セバスチャン・ローデンバック(『大人のためのグリム童話 手をなくした少女』)。夫婦であるふたりがタッグを組み、鋭く繊細な実写映画的演出と、描線の筆遣いが活き活きと残されたワイルドで大胆なアニメーションで、唯一無二の映画体験を贈る。
この映画の「主役」である子どもたちは、録音スタジオではなく屋外で、実際に体を動かして演じながら声を収録。クレマン・デュコル(『アネット』)による楽曲が、楽しさだけではなく切なさでこの物語を彩る。
カラフルでスウィートな映像、笑いと涙のあいだを自由自在にかけめぐる物語、そしてなにより登場人物たちの爆発的に愛らしいアナーキーな魅力が前代未聞のレベルで掛け合わさった、大人から子どもまで誰もが楽しめる”史上最高級”のアニメーション・コメディ!
STORY
リンダが1歳のときのかすかな記憶――。ママのお気に入りの指輪と、パパが作ったパプリカ・チキン。とっても幸せな食卓だったのに、パパが突然消えてしまい、いまは少ししか思い出せない。8歳になったリンダは、ママとふたり暮らし。ある日、憧れの指輪を盗んだとママに勘違いされてしまう!間違いだとわかったママは償いのためになんでもすると言う……リンダは言う、「明日、パパのパプリカ・チキンがたべたい!」
次の日、ふたりはチキンを買いに出かけるが、なんと街はその日、肉屋もスーパーもストライキでやっていない!パパの思い出を取り戻したいリンダの固い決意を知ったママは……。
チキンをめぐる母と娘のクレイジーなドタバタ劇は、警察官やトラック運転手、団地の仲間たちを巻き込んで大騒動に。果たして、リンダは無事パプリカ・チキンを食べることができるのだろうか?
CHARACTER
リンダ
8歳の女の子。お母さんのポレット、そして飼い猫のガッツァと、静かな団地で暮らしています。お父さんは彼女が幼い頃に亡くなったので、彼女はお父さんのことを覚えていません。唯一覚えているのは、お父さんがよく作ってくれた特別な料理、パプリカ・チキンだけ。だから、母親がそれを作ってくれると約束したとき、リンダはどんな言い訳も受け付けないのです、たとえそれがストライキ中であったとしても!
ポレット
リンダのお母さん。夫・ジュリオを亡くしてから、立ち直れていません。物語は、娘・リンダが自分の指輪と黄色いベレー帽を交換してしまったと思いこみ、責めてしまうところから始まります。自分の勘違い(指輪は飼い猫がのみ込んでしまっていたのでした.....)に気づいたポレットは、リンダが自分を許してくれるためなら何でもするつもりです。しかし、彼女に何ができるのでしょう? だって彼女は、料理については何も知らないのですから……冷凍食品を電子レンジでチンする以外は!
アストリッド
リンダの伯母(ポレットの姉)。誰も見ていないところでは、キャンディーを食べてなんとか癇癪をおさめます。しかし、ヨガインストラクターの彼女であっても、厄介な妹に対して冷静でいるのは難しいようです!
カルメン
リンダの親友で、団地の1つ上の階に住んでいます。彼女には、いつも面倒を見ている弟のパブロに加え、フィデルとカストロという2人の兄がいます。聞く耳を持たない男の子たちと一緒に暮らすのは、ときに大変なものなんです。
アネット
管理人の娘で、ガーリーな彼女は帽子に目がありません。アネットは新しいベレー帽をリンダに貸してあげます。まさか、それが次々と事件を引き起こすきっかけになるとはつゆ知らず。
アフィア
大きな飼い犬ゾロと、団地のあちこちを散歩している女の子。彼女の友人たちはみんな、この団地で、彼女ほどたくさんの食べ物が家にある人はいないと知っています。
ジャン=ミシェル
愛称ジャン=ミミ。音楽好きのトラック運転手で、羽毛アレルギー。ポレットとリンダはそんな彼のトラックに紛れ込んでしまいます。彼の年老いた母親はリンダたちと同じ団地に住んでいます。彼はポレットを見るなり、一目惚れ。二人を助けるためなら何でもするつもりです。
おばあさん
ジャン=ミシェルのお母さん。彼女は時々、リンダとその友人たちに、団地の角のスーパーマーケットで出くわします。田舎育ちですが、ニワトリの殺し方を知っているわけありません…..だって彼女は皆と同じく、スーパーマーケットで鶏肉を買うのですから!
セルジュ
マジシャンになり損ねて、警察官になったばかり。実際、今日がはじめての出勤日で、巡査長から目を付けられています。そんな彼は、自分の人生を変えるかもしれない、信じられないような追跡劇に巻き込まれることになるのです。
VOICE CAST
リンダ役
落井実結子
comment
最初に映像をみた時に、私が知っているアニメとは全然ちがったのでびっくりして、やってみたいと思いました。だから、リンダをやらせていただけることになって、とてもうれしかったです。リンダは、イタズラ好きだけど悪い子じゃなくて、友達と楽しく遊ぶ普通の子だと思うので、自然にやれたらいいなと思います。でも、私は普段のんびり話すのですが、この映画では会話のテンポが大事かなと思ったので、そこは気を付けてがんばりたいです。
2014年生まれ。ドラマ出演作に、NHK大河ドラマ「光る君へ」(24)紫式部の幼少期・まひろ役の他、「緊急取調室 3rd SEASON」(19)第6話ゲスト西崎凛役、「少年寅次郎」(19)車さくら役、「この恋あたためますか」(20)神子茉由役、NHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」(22)大姫役、「カタカナ」(22)松久保七海役、「大奥」(23)徳川家治役など。映画出演作に『母性』(22/監督:廣木隆一)、『窓ぎわのトットちゃん』(23/八鍬新之介)、『わたしのかあさん -天使の詩-』(24/監督:山田火砂子)など。
ポレット役
安藤サクラ
comment
素晴らしい作品に携われること、大変うれしいです。アニメーションの吹き替えは新鮮な挑戦ですが、なんだか私が演じるポレットのことは古くから知っているような感覚でもあります。どんな風に演じようか、日本語で吹き込むのが楽しみで仕方ありません。きっと日本語版もみなさまに愛される作品になると思います。ぜひ楽しみにしていてください。
1986年生まれ、東京都出身。2006年女優デビュー。主な出演作品に、『百円の恋』(14/監督:武正晴)、『0.5ミリ』(14/監督:安藤桃子)、『万引き家族』(18/監督:是枝裕和)、『ある男』(22/監督:石川慶)、『BAD LANDS バッド・ランズ』(23/監督:原田眞人)など。『百円の恋』『万引き家族』で日本アカデミー賞主演女優賞はじめ数々の映画賞を受賞。近年の出演作に、『怪物』(23/監督:是枝裕和)、『ゆとりですがなにかインターナショナル』(23/督:水田伸生)、『ゴジラ-1.0』(23/監督:山崎貴)。また『屋根裏のラジャー』(23/監督:百瀬義行)にてアニメーション映画初声優を務める。
ジャン=ミシェル役
リリー・フランキー
comment
ある種アナログな、本当に筆の跡が見えるような、手仕事のひとつひとつをしっかり感じることができる作品でした。色々自由に作られているものってすごく刺激的ですし、アートアニメというと敷居が高くなるかもしれないけど、このアニメーションの持っている概念、1つ1つの美しい絵とともに、物語を楽しんで欲しいですね。
1963年生まれ、福岡県出身。イラストやデザインを手掛ける他、文筆、写真、作詞・作曲、俳優など多分野で活動。『ぐるりのこと。』(08/監督:橋口亮輔)でブルーリボン賞新人賞を受賞。その後『凶悪』(13/監督:白石和彌)で日本アカデミー賞優秀助演男優賞、『そして父になる』(13/監督:是枝裕和)は最優秀助演男優賞など多数受賞。カンヌ国際映画祭では、主演を務めた是枝監督作『万引き家族』(18)がパルムドールを受賞。近年の主な出演作品は。主演映画『コットンテール』(24/監督:パトリック・ディキンソン)、『パレード』(24/監督:藤井直人)をはじめ、今泉力哉監督の『ちひろさん』『アンダーカレント』(ともに23)、『アナログ』(23/監督:タカハタ秀太)など。
アストリッド役
寺崎裕香
セルジュ役
柳生拓哉
おばあさん役
反町有里
カルメン役
臼井美紗子
アフィア役
永瀬アンナ
アネット役
朝陽ましろ
ジュリオ役
阿部竜一
STAFF
キアラ・マルタ
子ども時代をテーマにした3部作を含む短編映画を数本監督するなど、数々の国際映画祭で入選、受賞している。長編ドキュメンタリー『アルマンド エ ラ ポリティカ Armando e la politica』をドキュメンタリー番組「ラ ルカルネ La Lucarne」(アルテ/第2ドイツテレビ)のために監督した後、ヴィラ・メディチ(ローマ)でのアーティスト・イン・レジデンスに参加。ジャスミン・トリンカとエリナ・レーヴェンソンを主人公にした初の長編映画『シンプル ウィメン Simple Women』は、2019年のトロント国際映画祭ディスカバリー部門のオープニング作品となった。マルタは、フランスのテレビシリーズ「クロニクル オブ ザ サン Chronicles of the Sun」のエピソードを定期的に監督しており、現在はイタリアでグルンランディアとフィデリオが製作するシリーズの第1シーズンを撮影している。『リンダはチキンが食べたい!』は彼女にとって、初の長編アニメーション作品である。
セバスチャン・ローデンバック
映画監督、イラストレーターで、ENSAD(フランス国立装飾芸術高等学校)教授でもある。数々の国際映画祭で入賞した短編映画のほか、書籍の表紙やミュージックビデオも手がけている。 長編映画『大人のためのグリム童話 手をなくした少女』はカンヌ国際映画祭に出品され、アヌシー国際アニメーション映画祭で受賞、セザール賞にもノミネートされた。効果的かつアニメーションの勘所を押さえながら、躍動感にも溢れる、特徴的なスタイルを確立した。
PRODUCTION NOTE
『リンダはチキンがたべたい!』の原案は、キアラ・マルタが参加したムーランダンテのアーティスト・イン・レジデンスで生まれた。そこで余った2日間に、夫であり制作上のパートナーでもあるセバスチャン・ローデンバックと考え出した企画だ。二人の子を育てるなか、子どもに見せたいと思うアニメーションが少ないと思い、自分たちだからこそ作れる作品を考えた。
そのときにできたプロットは完成作とほぼ変わらないものだったが、制作のスタートまでに数年を要することになる。普通に作ろうとすると、かなりの予算が必要になりそうだったのだ。その後、ローデンバックが初の長編作品『大人のためのグリム童話 手をなくした少女』を完成させたことが、大きな転換点となる。ローデンバックが全編ひとりで作画したこの映画は、大胆な省略と躍動感を共存させるスタイルを採用しており、この手法を応用すれば、『リンダ』も「安く、かつ自由に」作りうると確信したのだ。
監督と脚本にはマルタとローデンバックの2人がクレジットされており、ほぼすべての作業を一緒に行った。「我々は夫婦ですし、お互いの作品でも協力し合ってきました」とローデンバック。「演出に対する考え方も同じです」とマルタが付け加える。本作の最もユニークな要素は、声の録音方法だ。絵づくりの「前」に録音されているのだ。マルタは「普通のアニメーションは絵に音を合わせますが、本作では音に絵を合わせるべきだと二人とも考えました」と言う。このやり方は、脚本の立ち位置を実写映画に近付ける。マルタは続ける。「実写の場合、脚本は“道具”であり、実際の撮影の現場で変わっていきます。本作はアニメーションですが、カオスを自由に描き切るために、実写的な即興性が欲しかったのです。即興を許しながら録音することで音にリアリティが生まれ、結果として絵のスタイルで冒険ができるようになりました。」
実際の“録音”風景は興味深いものだった。「実写映画の撮影とほぼ同じでした。カメラやカチンコがない以外は、スクリプターもいるし、俳優たちにもしっかりと演出をつけています」とマルタ。ローデンバックが続ける。「子どもにはおもちゃを持って演技してもらい、その音も入るようにしました。学校のシーンは学校で撮るなど、録音のロケーションも合わせています。」
声のキャストにも実写映画で活躍する俳優を起用した。「声そのものではなく、キャラクターを演じきる演技力を重視して選びました。」とマルタ。“カメラのない撮影現場”に対し、俳優たちに戸惑いはなかったのか。マルタは答える。「普段の仕事の延長でやれるので動揺はなく、カメラがないことで自分をきれいに見せることに気を取られず、むしろ演技に集中できていました。」
活き活きとしたキャラクターを生み出す秘訣は他にもある。主人公のリンダは二人の娘がモデルになった。マルタは言う。「パイロット版の制作時、娘はリンダくらいの年でした。イタズラ好きな性格で、彼女を観察することで、リンダにリアリティが生まれました。」ローデンバックは続ける。「リンダを演じたのは友人の娘です。生まれたときから知っていて、性格もリンダにピッタリでした。」
キャラクター造形については、シンプルさが重視された。スコット・マクラウドの『マンガ学入門』での「絵がシンプルなキャラクターほど、人の心に残りやすい」というテーゼに加え、実写映画でも『地下鉄のザジ』や『ペーパー・ムーン』のように、遠景でもしっかりと子どもが判別できるようなキャラクターの造形性を参考にしたという。
アニメーターたちにも「自由」が与えられる。本作はアニメーターたちによる集団作業で作画されたが、モデルシートに縛られる必要はない、録音から想像した動きを重視してほしい、と伝えたという。「現実の私たちは、状況によって顔が変わるものです。だから映画でもシーンによってキャラクターの顔が違っていい。アニメーターたちは本作における“第2の俳優”です。」
独特の色合いの背景美術はマルゴ・デュセニールが担当。マルタは言う。「彼女の本業は画家なので賭けではありました。でも、ガッシュで丸い点を散りばめながら描くスタイルは美しく、子どもたちに見せたいものができました」。デザイン面ではイタリアのデザイナーたちも“貢献”した。「ブルーノ・ムナーリの『ファンタジア』に影響を受けました。“もし赤ずきんが白ずきんだったら物語も変わるはず”というように、色とストーリーが直結するという考え方が面白い。レオ・レオニの『あおくんときいろちゃん』も、シンプルな色で子どもの世界を描く参考にしました。」
作曲家のクレマン・デュコルの功績も大きい。マルタは言う。「ストーリーと密接に関わる音楽を作りたかった。彼はまるでニーノ・ロータのように、映画の核に直結する音楽を作ってくれました。」音楽については象徴的なエピソードがある。終盤で流れるリンダのお父さんの曲は、歌詞の内容が悲しかったので、クレマンは最初、悲しいメロディーを書いてきた。「でも、それは私たちの意図とは違いました。『オール・ザット・ジャズ』のミュージカルシーンのように、歌われている内容は悲しいのに、映像や曲調はきらびやかで明るいというものが作りたかった。」マルタはこう言って話を締める。「私が育ったイタリアのコメディには笑いと涙が共存しています。今回の映画でも、その両方が重要だったのです。」
COMMENT
敬称略・順不同
片渕須直
(アニメーション映画監督)
この映画は確かに
ひとりひとりの人物の姿を、
そこにいた人として生み出している。
小林聡美
(俳優)
「なんでこーなるの!」。
リンダはチキンが食べたかっただけなのに。
カラフルで爆発的にチャーミングな登場人物たちが、
それぞれの魅力を惜しみなく発揮して、
次々とまさかの展開へ。
ストライキで行進する人たちと、鶏を追いかける人たち。
そしてアムール。
みんな本気なんだから。笑った!
足立紳
(脚本家・映画監督)
なんて優しくて逞しくて
愛おしい映画なんだろう。
不完全なお母さんに不完全な伯母さんに
不完全な子供。
みんな一生懸命生きている。

私はたまに聞いたふうな説教くさいセリフを書くのに、
そのセリフの1ミリも実行できていないし、
きっとこれからもダメな親のままの可能性が高いけど、
それでもなんとかよろしく頼むと心の中で我が子に言っていた。
しまおまほ
(作家・エッセイスト)
子どもの時は、大人って自分勝手だと思ってた。
大人になって、子どもってどうしてこんなにわからずやなのって思う。
……それって、同じじゃん。子どもは大人で、大人も子どもなんだ。
楽しいこと、悲しいこと、
一緒に抱きしめよう
大好きな思い出の味を、
ほっぺたいっぱいにつめて、
一緒に笑おう
三浦哲哉
(青山学院大学教授)
いまは亡きお父さんの得意料理を求めて……
なんてけなげな話だろう、と心が鷲掴みにされました。
しかもその料理はパプリカ・チキン!
めちゃくちゃおいしい家庭料理の名作です(私もたまに作るんです)。
この映画を見たら
きっとみんな絶対作りたくなるでしょう
(鶏は生きてないやつで!)
荻上直子
(映画監督)
どうしてもそれを食べないと終われない1日。
お料理と一緒に
大切な人との記憶を味わって、
ハッピーに眠る。
明日も大丈夫、と思う。
村山章
(映画ライター)
監督夫妻は「子どもの映画を作った」と言っているけれど、
子どもたちに干渉する大人たちの都合や事情は描き漏らさない。
気がつけば、子どもも大人も一日だけの冒険に乗り出して、
観ているこちらもいい日になりました。
作田ハズム
(アニメ監督
『映画 すみっコぐらし ツギハギ工場のふしぎなコ』)
「リンダはチキンがたべたい!」は
カラフルなグラフィックでぼくらを魅了します。
黄色一色で表現された主人公のリンダは、
家族の中にいるときは暖色系の色に馴染み、
団地の子供たちと行動するときは賑やかな子供らしい配色に。
どのシーンどのカットを見ても
アートとして成り立っている色の世界が
心地よい作品です。

夜の車道のシーンも目を見張る美しさ!
脇田あすか
(デザイナー)
あざやかにくるくると舞う、
楽しくてうつくしい色や線に目を奪われていたら
気づけば物語はとんでもない方向へ進んでいた。
子どもも大人もみんな等しく真面目におかしくって、
思わず声を上げて笑ってしまう。
不完全だから、愛しくて美しいんですね。